2017年シーズンが始まりました。
今シーズンのエントリーフォームには、参加者が考えるご自身の「ペイフォワード活動」について書いて頂く項目を必須としました。
初めての参加をお考えの方から、いったい何のためにそんな必要があるのか、というお問い合わせを頂きましたので、ここで改めて「川西ルーキーズクロス」の開催の理念と目的を確認させて頂きたいと思います。



2015年の3月。
私が、400万円を超える持ち出しをしてまで新たなレースを始めるといったら、まわりは皆、バカだと笑いました。
でも、今年の最終戦。
大勢の参加者が集まり、すべてのポンダは出尽くし、川西のスターティンググリッド一杯にライダーが並ぶのを見て、私は・・・

・・・実は「嬉しさ」と、「悲しさ」の両方を感じていました。

この異なる2つの気持ちが湧いたのは
何故でしょう・・・?

「ペイフォワード」
受けた恩を次の誰かへ

もちろん、儲けるために始めたレースではありません。
10代の少年時代にモトクロスで受けた恩を返すために始めたレースです。
数が減ってきているモトクロス人口を、再び昔みたいに増やすーという恩返しために。

恩返しの活動は、このレースの主催がはじめてではありません。
10年前に、ライダー復帰して以来、ずっと行って来ました。
震災時は全国のライダー仲間からの支援物資を運ぶ「ありんこ支援隊」、そして地元出身のトライアルIA-S選手への協賛サポートや、モトクロスのIAルーキー、ゼッケン04番の高輪選手のサポート、そして昨年までは地元キッズレースの広報のお手伝いや、モトクロス初参加の方へのマシン貸与や援助サポートなど。

自分に出来ることを、出来る時に、できる範囲で、行ってきました。

・・・でもそれは、言いかえれば、片手間で、責任もなく、するもしないも、自分勝手な恩返しでもありました。

人生の節目を迎え

私は今年で50歳となりました。
昔から「人生、50年」といわれて来ましたが、その歳になりました。
ある意味人生の折り返し地点に立ったと思いました。
そしてそれがきっかけで、これ以後の人生、片手間でなくマジメに「恩返しとペイフォワードの活動」を行おうと決めました。

これまでは自分自身の私費だけで活動の資金を捻出してきました。
しかし、今年、会社の登記を書き換え、「ATR(アトラスレーシング)」という部門を付け加えました。
そこで、最初に書いた400万円の資金を負担して、ポンダを用意し「Rookies-X」というモトクロス普及の為のレースを始めたのです。

まわりの皆には「バカだ」と、笑われました。
税理士からは 「会社は営利を追求する為のものです!」と怒られました。
でも私は答えました。
「このATR部門は社会貢献活動のために作った部門です。利益を取るつもりは一切ありません」
そして付け加えました。
「会社は営利を追求するだけでなく、社会にどれくらい役に立つかも追及するべきものなのです」と。
つまり、アトラスという会社の中にNPO法人(非営利団体)のような部門を作ったわけです。
一つ大きく異なる点は、通常のNPO法人が寄付やパトロン企業からの資金で賄われるのに対して、
「ATR」は「アトラス自身」が資金を負担するパトロンだという点です。

こう書くと、反論がある方がいるかもしれません
「Rookies-Xでは、ちゃんとエントリーフィーとして、お金を集めているじゃないか!」と。

確かに頂いています。
しかしご存知の通り、「Rookies-X」は一般的なレース参加費の「半額以下」の設定です。
理由は、ファミリーで、お父さん、お母さん、そして子供さんの家族全員が参加しても、負担にならないように、という設定です。
より多くの方にモトクロスの魅力を知ってもらう事が目的なのですから。

当たり前ですが、「採算」など度外視です。
今年4戦行いましたが、参加費は合計で40万円にも届きません。
年12戦やっても、採算は取れません。(取るつもりもありませんが)
逆にいえば、やればやるだけ赤字=持ち出しが増えるだけなのです。

そうなんです。
私たちアトラスが持ち出しをして、毎回開催しているのです。

それをご理解頂いたMFJ新潟と川西モトクロス場にもご協力頂いて、コース費も安くして頂きながら、毎回ブルまで入れて頂いています。

何のために、そこまでやるのか?

すべては、私たちのポリシー、この「ペイフォワード」のポリシーを次の誰かに手渡すため、そして、広めてほしいからなのです。

このポリシーに感銘し共感し、賛同して頂いた皆さんに、普及活動の宣教師になってほしいからです。
私たちが目標とする、モトクロスとモータースポーツの普及と競技人口増加の為に、活動してほしいからなんです。
その夢と目標のため、そんなお金を持ち出して活動をしているのです。

・・・でも、最終戦、シーズン最多の大勢の参加者が集まっていながら、私は暗い気持ちになっていました。
1戦1戦重ねるたびに、「実は、ポリシーが伝わっていないのでは?」
そう感じる事が多くなっていたからです。

ただ「安いから」、

ただ「楽しいから」、


もし、それだけの理由で集まっていたら、いくら参加者が多くても、持ち出しをしてまで開催しても、意味がないのではないか?  と。

私たちアトラスが、心血注いで仕事をして稼いだお金を投入して、持ち出してまで開催していてもその私たちの信念を理解して、賛同して、

「活動に協力しよう」
「自分たちも活動を広めよう!」

そう思ってくれる方がいなければ、レースは全く意味をなさない  と感じたからです。

私たちが多大な負担をして開催している「Rookies-X」が、スーパーの100円タマゴのような単なる「激安の特価品」と思われ、もし、それだけをカゴに入れて「得した、儲かった!」と持ち帰っていたら・・・?と。

参加者が増えることだけが「Rookies-X」の成功ではありません。
この大会に参加したことで、今まで考えたこともなかった「恩返し」や「ペイフォワード」の精神を受け取って、それを持ち帰ってくれる参加者が増えることが私たちの幸せなのです。

そして、その精神を地元に持ち帰り、競技人口が増えるための活動や、時には私費を出し合ってコースを作ったり、クラブを作ったりとそんな活動がネズミ算的に全国で増えてほしいと願っているのです。

それができなくても、参加した感想やレポート、そして、この大会のポリシーを広めようとブログやFaceBookに書くだけでも、それは宣教師としての普及活動にもなるので、私たちは嬉しいのです。

すべての参加者が、ペイフォワードの精神を広める普及活動に「ご協力いただける人」になって頂けたら、それが嬉しいのです。

そして、そういう方々でスターティンググリッドが一杯になった時、私はその様子を見つめながら、今度は、心からの笑顔で、「このレースを開催して良かった!」と思えるのだと判りました。

そして、私は一つの決断に至りました。
来年の開催について考えた結果、ポンダは増やさないと決めました。
きっと、今年と同様に広く門戸を開いていれば、来年は更に参加者が増えると予想されます。しかし、繰り返しになりますが、この大会は大勢が集まれば良いという主旨のものではありません。

モトクロスやモータースポーツの普及を目的とする私たちの活動にご協力下さる意思のある方、また同様にペイフォワードの活動に賛同するMXOBやベテラン選手の方々、そして各地で普及活動をされている方々と、そんな方々が連れて来てくださる、「初めてのモトクロスレース」に挑戦するためにルーキーズに参加してくださる方々。
これらの方々に対して50台限定で参加を受理し、ペイフォワードの精神で普及活動を行う仲間を増やす大会として開催していくと決めました。

一人ひとり、自分の立場における「ペイフォワード活動」を考える

「モトクロスを知らない人に、『モトクロスをやってる人は素晴らしい』と思われる行動をしたい。」

今回、12歳の少年がエントリーフォームに書いてくれた「ペイフォワード活動」への想いの一文です。

その彼がいつも心に思っていたことかもしれませんし、今回のエントリーに当って「ペイフォワード活動」を自分のこととして改めて考えて出てきた想いかもしれません。

私自身もそこそこの年齢になって、世の中を見回すと、モラルやマナー、社会常識が低下していると思える出来事が増えています。
自己中心的な考えで振舞ったり、非常識なことでも自分に利益や得があれば目をつむって行ったり、平気で嘘をついたり。
そういう大人たちに囲まれた環境にいる子供たちは、更にモラルやマナーが低下していくとういう、負のスパイラルが出来てしまいます。


そこで、上に書いた12歳の少年ライダーの言葉が非常に明確でわかりやすいのですが、この「川西ルーキーズクロス」では、参加者の皆さんにも主催の私たちと同じ想いで、「バイクの楽しみ、モトクロスの楽しさを広げる活動」を地元の各地でも行って頂きたいのです。

そして大会への参加や練習会などでの交流で多くの仲間や家族でコミュニティを形成して頂き、キャンプやバーベキューなどの楽しいイベントの設営や準備などを通して、子供たちに「手伝いや準備をする楽しさ」を教えたり、また、競技への挑戦を通して困難や挫折に直面し、克服と努力の大変さを実感し、叱咤激励しながら、乗り越える経験を通し、素晴らしい人格形成に役立ててほしいと考えております。

大人たちは子供や若者達の良い規範になり、子供たちも小さな子どもたちの面倒を見る良いお兄ちゃん、お姉ちゃんになり、さらに中学生や高校生は、よき先輩として、そんな子供達の面倒を見て、手本となりルールも教えられるようになってほしいと思います。

もちろんすべてのレースがそうした大会ではありませんし、それぞれの開催理念と目的があって良いと思っています。
しかし「川西ルーキーズクロス」はそれがポリシー(理念)であり、そのことを理解して参加して頂きたいのです。

ライダーは「お客様」ではなく、同じ思いの「スタッフ」の一員

最後に繰り返しになりますが、ここで今一度の確認をお願いします。

私たちがここまで安いエントリーフィーで大会を開催しているのは営利目的でないからです。
そして、参加者の皆様も、この大会では「お客様」ではありません。

エントリーの注意書きに、

「『ペイフォワード』のポリシーに理解・賛同して頂き、その活動に参加する意志のある方のみ、エントリーを受理しております」

と記していますが、 これで判るとおり、 参加する皆さんも、主催者と同じ思いで一緒に大会を盛り立てて頂き、そしてモトクロスはもちろん、トライアルやエンデューロ、ロードレースなど、ジャンルにとらわれず、モータースポーツ振興のために活動するスタッフの一員となって頂きたいのです。

「川西ルーキーズクロス」では、そんなご意志のある皆様をお待ちいたしております。